Writer: GIMA MISAKI
URL: www.gima-misaki.com
中身を全て見せる涼しげなパッケージ
中身を全て見せる涼しげなパッケージ
この春夏のパッケージトレンド・キーワードは「簡素ながら華やかに」というもの。ポップでカラフルな商品が目につく。合理的に色とりどりの中身をそのままガラスやプラスティックの容器に入れ、丸ごとを魅せて購買意欲をくすぐる商品が食品パッケージ部門で目立った。商品の一部を見せるのではなく、まるで死角がないほどに、「中身をすっかり見せる仕様」。外から手に取り、中身の隅々を良く吟味して、安心して購入できる。また、購入後も、しばらくはディスプレイのように、キッチンのインテリア・デコとして、楽しめる。
下記の商品はフランスの「Gourmet in love」社のもの。スパイスやお茶などを扱っている。おしゃれ雑貨も扱うスパイス・料理材料のお店や、ペットやガーデニング、インテリア雑貨まで幅広く扱う大規模チェーンの園芸用品店のショップでも展開されている。
上段:ピナ・コラーダ、ブラック・ジョーカー、セックス・オン・ザ・ビーチなどのカクテルが簡単に作れるカラフルなボトル。
下段:ミントやココナッツなど、ハーブやドライフルーツの入ったボトル。ホワイトラムやウォッカを注ぎ、しばらく置いてから、濾しておしゃれなカクテルに。ボトルのネックにラフィアで巻かれたタグがナチュラル系を演出。
Gourmet in love
http://gourmetinlove.fr
パッケージ素材の選択とラベルデザイン
お菓子の会社「Les Gourmandise de Sophie」社はフランス全土の有名百貨店やスーパーでおなじみ。大きな瓶に見える容器は、実は素材はプラスティックで薄く、とても軽い。カラフルな中身をイラスト付きの黒のラベルシールで引き締める。
女の子のイラストはすっきりデザイン風。よく見るとラベルをぐるりと囲んでいるのは星。会社ロゴにある二つの星は、ブランドのキャチコピー「La confiserie Étoilée(=星空のお菓子)」を上手にかけ合わせ、体現している。フランスでは子ども用のものでも、大人顔負けのシックな色合わせのものが多い。
寒色や中間色の商品バリエーションは、日本の子ども用品のデザインとは一線を画する。ここしばらくの欧州のインテリアやテーブル・デコに使われる近年のトレンドは、暗くて重い寒色系の色。それが食品業界にも波及している。
写真は、子ども達が夢見るようなカラフルなお菓子の詰め合わせ。パステルカラーが華やか。上・中段を占めるのは軽いプラスティック製のボトル。下段は主にガラスの蓋つきポットになっている。上段は、軽くて壊れやすいお菓子。下段はキャンディやグミ、キャラメルなどの壊れないお菓子が入っている。
中身によって、パッケージの材質が選択されている。食べ終わった後も楽しめるガラスのポット。リボンも似合う。
Les gourmandises de Sophie
https://www.lesgourmandisesdesophie.com/en
容器の材質をどう選ぶのか
プラスティックのコンテナ容器を使うのか、ガラスのボトルを使うのか。容器の原価や強度、機密性、耐久性に中身とのマッチング、見映え。それぞれの長所、短所について書きたい。
参考 プラスチックの基礎知識
参考 容器包装に使われる主なプラスティック
参考 食品用プラスティック容器包装の利点
まず、容器と中身のマッチング。欧州では近年、ミネラルボトルの水はできるだけガラスのボトルが良いという意識が高まり始めた。輸送中や店舗で太陽光に晒され、PET樹脂(PET ポリエチレンテレフタレート)から化学物質が溶け出す危惧だ。ガラスとPET樹脂では輸送時の強度が違う。中身に与える影響はガラスに分配が上がる。だが、国外輸送には耐えられない小ロットの生産者のガラスボトルのジュースの例を見たことがある。リサイクル可能な分厚いガラスのボトルは輸送に耐え得るが、見た目重視の薄いガラスのボトルはその限りではない。
写真左:夢のあるマシュマロやキャンディーが詰まった大きな軽い蓋つきジャーの素材はプラスティック。中のお菓子は壊れやすいお菓子、振ってもあまり動かない、湿気を呼びにくい、乾いた軽いお菓子なので、ガラスである必要がない。
写真右:向かって右の蓋つきポットはガラス。左のボトルは蓋つきボトルのプラスティック製。写真左の大きく軽い蓋つきジャーよりも厚い素材。ボトルは底を開け、お菓子を取り出す仕組み。蓋つきポットのリボンをラフィアに変えたらナチュラル風に。
蜂蜜などが入っていることが多いプラスティックの蓋つき容器。白とピンクの綿菓子が入っている。
上記商品と異なる色のラベルの理由は、容器の透明度の違いか?ガラスや他のプラ製ジャーの容器の透明度は高い。このコンテナは不透明のため、黒だとラベルが目立ち、強すぎる。中身まで視線がいかないせいで白のラベルが合う。
ガラス?プラスチック容器?
カラフルな中身で魅せたいお菓子の場合、容器は透明なガラスか、プラスティックか?
まず水溶性のもの、外にこぼれ出る内容物にはガラス容器。匂いや味に変化といった、食品に与える影響を考慮し、ガラスが良い。容器内に湿気・温度変化でくっつく可能性があるものも同様。外界の温度変化を伝えにくい。
では、乾燥した食品でプラスティックの容器を選択する利点を次に。プラスティックの容器はガラスと違い、割れにくい。素材が軽い。割れにくさならば水のボトルに使われているPET樹脂に軍杯が上がり、さらにPET樹脂の方が軽い。だがPET樹脂は簡単に凹む。高級感が出る、分厚いプラスティック素材は高級感が出るが、割れやすく細かな擦り傷が目立つ。容器の形状が円筒形になるのは、角があれば、欠けやすい、凹みやすいからだろう。
分厚い方のプラスティックの容器は素材そのもので綺麗だが、ボトルのような細工には実は向かない。蓋部分が素材の厚みと硬さのために、ゴムを噛ませるなどで蓋をする容器が良い。細工できないことはないが、硬く欠けやすいため、ネジ式で蓋を回して開ける形状はどちらかといえば、柔らかなPET樹脂に向いている。プラスティックの蓋と間に柔らかなゴムを噛ませて気密性を高める容器もある。
PET樹脂だとどうしても重厚感が出ない。その場合は厚いプラスティック素材を。その他、不透明素材になるがさらに柔らかく、厚みのある素材もある。お弁当用のタッパーなどによくあるが、フランスでは、ガラスに比べ、輸送が楽になるので、これらは価格帯を抑えたはちみつ容器などによく使われる。完全な透明ではないし、ガラスほどの高級感は出ない。
容器選択のまとめ
ガラス容器を使うのは水溶性のもの、高級感を出したいもの、コストが高くついても良いもの。ガラス容器は素材の匂いがつかない。また、耐熱ガラスがあり、ジャムのように殺菌してそのまま蓋をする保存食品などに便利だ。この点はプラスティック容器は不利。だが、輸送時には、重く、割れやすい扱い注意のマイナスポイントがある。
次にPET樹脂をはじめとするプラスティックの容器。透明で厚みのある素材で高級感を出したい。形状で素材を選ぶ。硬いプラスティックは透明感があるが、容器の角の割れが心配要らない形状で。ガラスより軽い。PET樹脂は軽いボトル状、円錐形などで角のない容器が可能な時。軽いが凹みやすく、内容物が重いものには向かない。あくまで完全な水溶性か、内壁にぶつかっても崩れない軽いお菓子の時に。
タッパーと同じ不透明なプラスティック素材はハチミツや綿菓子、ナッツ、スパイスなど。内壁がもっとも当たりが柔らかいが、食品の色や匂いが容器につきやすい。PET樹脂ほど軽くはないが、容器がフレキシブルなために、割れないし、壊れにくく、輸送には便利。プラ容器の種類はたくさんあり、いろいろな選択が他にもあるが、プラ容器は熱で変形するものが多い。
容器は内容物との相性で選ぶ。選択する際は、機密性、見た目が綺麗、高級感がある、かかるコストを考慮する。それ以上に、消費者に届く時に、商品の中身が壊れてない、内容物の変質がない、容器の外に漏れ出ないなど、多くのファクターを考え合わせ、慎重な選択が求められる。
もしよろしければ、ご意見・ご感想・取り上げて欲しいテーマなどを、ぜひご自由にお寄せください。
次回をどうぞお楽しみに。
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